2017.05.16 02:26セイレネス昔昔、あるところに美しい女の化け物がいました。村のはずれの洞窟の奥、雨が溜まって出来た泉に化け物は住んでいました。水底に隠れてしまう青い肌、災いの星が宿る光った目、腐った植物で合わせたドレスは幾夜よりも黒く、頭を飾った大きな角はまるで女王の冠のようでした。化け物は雨が降れば現れると伝えられていたので、雨の日はみんな家の中。だけどたまに外に出て行ってしまう人がいました。少女はお母さんとけんかして、な...
2017.05.16 02:23夢みるクジラ遠い昔、遠い昔 海を泳ぐ大きなクジラがいました。とても大きな体なので どこへ行っても窮屈です。どこへ行っても邪魔者です。みんなに嫌われてしまうので クジラは悲しくなって誰もいない場所へ行くことにしました。
2017.05.16 01:57黎明と創世ようこそ、クジラの世界へ。まだ誰も成し得ていないことではあるが、あの鳥のように高く見下ろせたなら、四匹の生きた大陸と神秘の海がこの世界の全てであるとわかるだろう。陸成るものは陸成らざる、偉大なるクジラたち。創世の頃よりこの世界には一欠けらの陸も無かったようだ。さて存在するものには名が無ければ不便で仕方あるまい。かの者が息をする場所が名の無い曖昧なものであってはいけない。世界の名を「フウェイル」と言...
2017.05.16 01:36chaloite-2 星クジラと花クジラの交流は開拓期末期から始まる。やっとクジラの背を端まで歩けるようになった頃、二つの大陸が目視出来る距離に近づいたことがあったのだ。とは言え動く土地同士で意思疎通をすることは容易ではない。海に船を出しても記録に残っている大半は予想以上の長旅で食糧不足や精神疲労によって船員が衰弱したとされる。天候が荒れて船が壊れそのまま沈没したり、運が悪ければクジラに襲われてしまったらしい。海はク...
2017.05.16 01:13chaloite-1 星クジラ中部、商業都市バルジ。この町の技術者たちの腕が良いことが評判でフウェイルの経済は3割ここで回っている、らしい。職業を持っている以上関係が無いことでは無いが、人の行き交う大通りを少々苦い顔をして歩く青年には、どうにも遠い話に思えていた。 彼はマーチャー、いわゆる便利屋であり、実に様々な仕事を請け負って生計を立てている仕事ぶりは至って真面目。悪事には一切手を貸さないことが唯一の信条だろうか。...