【フウェイル】

四匹の生きた大陸と神秘の海によって出来たこの世界の名前。

星クジラ、花クジラ、砂クジラ、雪クジラがそれぞれ大陸となりその背に文明が栄えた。

創世における伝承では夢みるクジラというもう一匹も語り継がれているが存在は信じられていない。

夢みるクジラの恩恵によりこの世界には魔法があり、大陸クジラの恩恵により魔力が身近なものになっている。

主題としている時代では技術改革による文明の進歩と伝承や御伽噺に対する畏敬の忘却で思想が入り乱れている。

【魔法と魔力】

夢みるクジラの恩恵、魔力を扱うことによって起こる不思議な現象。

強く念じるだけでも魔法は使えるが、多くの人は確実性を求め呪文を覚える。

複雑ではあるが精密かつ高度なことが出来る魔方陣、時間と労力をかける分運命を変えることも出来る儀式などもある。

魔力はフウェイルの大気の中に漂っているが扱えるかどうかに関しては個人差があり、先天的に強い魔力を持つ種族もいればまったく魔力を使えない種族もいる。

一般的に魔力を秘めた道具や装飾品を身につけて魔法を使う者が多い。

また魔力には大陸クジラにあやかって分けられた四つの属性があり、起こす現象は様々である。

【星クジラ】

生きた大陸のうち、最も文明が栄え、最も人々を有しているクジラである。

創世期の記述によればその背には星が降り注ぎ火の種となり文明の礎を築く切っ掛けになったと言う。

青い土で覆われた地はやがて金属を生み出しフウェイル中に影響を及ぼすことになる。

住みやすく、技術改革による利便化が進んでいるため商業都市バルジを中心に活気ある場所が多い。

革命と氾濫の時代を終えた今では昔ながらの工芸も流通し始め、田舎も賑わっている。

その他夜渡りウィースピーや小人のコルポル、妖精に纏わる伝承も多く残っている。

【花クジラ】

生きた大陸のうち、その背のほとんどが森に包まれたクジラである。

緑豊かな土地は鮮やかな草花や果実をもたらし、暖かな空気は常永の楽園を思わせた。

開拓は必要最低限に留まっておりその分小さな町が多いが全体的に華やかで、滞在する者は多い。

更にタウンゼントアカデミーという施設があり、ここで魔法についてを深く学ぶことが出来る。

そして唯一現存するハイエルフの王国ドリアドも碧光の森の深くにあるという、実に珍しい場所だ。

森と花クジラを一体化した信仰も多く、伝承の真偽は森の中に隠されているのだろう。

【砂クジラ】

生きた大陸のうち、吹き荒れる風と乾いた土地を背にしたクジラである。

人が生きていくにはあまりにも過酷な環境なのかもしれない、町は風が穏やかな南側にある。

しかし大陸中央に位置するウロ砂漠を越えた先には数々の少数民族が独自の文化を築いているらしい。

異郷を訪ねるべく旅人となった者も多く、帰ってくることが出来た僅かな者たちの伝記は重要な資料になった。

今はもう旅人というものは廃れてしまったが、その名残で南西のトワレイではあらゆる情報が囁かれている。

なによりもこの土地には竜の伝承があるためにトレジャーハントが盛んになる兆しがあるようだ。

【雪クジラ】

生きた大陸のうち、雪が降り積もった真っ白なクジラである。

寒さのあまり結晶化という現象が頻繁に起きているため、どこも宝石で囲まれたように美しいと言われる。

しかしこの大陸は未だエルフの独裁が重要都市に根付いているために情報が入ってこない。

雪のハイエルフのコーリオは奴隷となって、肌から突出した結晶を搾取されているらしいが……。

ここもまた過酷な環境を生き抜く少数民族がいるとされているが、前述のためにまったく未知の世界だ。

人々の中には雪クジラ解放を望みエルフに反旗を翻そうと企てる者もいる。そう、革命の頃のように。

【人間】

フウェイルに多く存在する種族。一貫した特徴は特に無い。

魔力を扱えない代表的な種族ではあるが、魔法を使うために試行錯誤したその歴史はあらゆるものを生み出し文明の発展へ繋がった。

地方には少数民族として独特の習慣を持ち魔法が使えるようになった者たちや、他種族との混血で魔力を扱える者もいる。

【エルフ】

無属性の、耳の長い亜人。魔法に長けている他、長命で丈夫な体や高い聴力、夜目などを持っている。

器用で種族全体を見ても知恵のある者が多い。戦闘などでも上手く立ち回れる、優秀な種族。

しかしプライドも高く多種族を見下す傾向がありこの世界では嫌われ者。

エルフがフウェイル全土で独裁政治を行っていた時代もあったが、革命が起こり雪クジラ以外では権力を失った。

【ハイエルフ】

生命誕生の頃に一部のエルフがクジラの持つ魔法と融合した種族。スティエ、フララー、ウィンガ、コーリオのこと。

どのハイエルフも、各属性の魔法に非常に長けていて種族としての誇りを持っている。

愛国心が強いので定住地は各クジラの上が多いが他の場所にまったくいないわけでもない。

ただし戦闘能力は元々高くなく、争いを好まない故に迫害されたり奴隷として利用されてたりもした。

【スティエ】

星クジラに多く定住するハイエルフ。

髪の先端が炎のように揺れている他、目の中に星があり、暗闇では灯火のように見える。

意思や感情によって体から発火が起こるため秘密や隠し事は苦手なようだ。

革命時代にサラマン将軍というスティエがエルフの王国・アルフェルムから領土を取り返している。

【フララー】

花クジラに多く定住するハイエルフ。

褐色肌で緑色の髪にいろんな花が咲き乱れるその姿は木が歩いているように見える。

特に祭事を大切にしてきた文化を持ち、賑わいが好きな種族でもある。寒さには弱い。

ハイエルフの中で唯一領土を守り抜き今もなおドリアドという王国を所有している。

【ウィンガ】

砂クジラに多く定住するハイエルフ。

グレイッシュの肌を持ち、肌と同じ色の風になることが出来る。気まぐれで心変わりの多い種族。

風に化けているときは会話や魔法などの行動は不可能だが隠密に移動できるため、暗躍に手を貸す者が多い。

灰色の肌を持つ者は災いを招くとして伝統的に迫害している。

【コーリオ】

雪クジラに多く定住するハイエルフ。

厳しい寒さに耐えるために魔力を体内に蓄積した結果、肌の至るところから結晶が突出している種族。

この水晶は若いほど純度が高く高値で売却されるために子供が浚われる事件が過去に頻発していた。

未だなおエルフの独裁から解放されておらず、詳細が不明である。

【夢みるクジラ】

フウェイルを泳いでいた最初のクジラで、フウェイルの核。魔法の源。

四匹とは違い、海の奥深くで静かに泳ぎ世界の夢を見続ける伝説の存在となっている。

このクジラが他の四匹と海を創造し、彼らが悠々と泳ぐ世界が出来たとされるのが創世に関する伝承である。

伝承として確立していても夢みるクジラを見た者は誰もおらず、存在自体は否定されていることが多い。

……フウェイルは終わらない幸せな夢である。彼女は永遠に眠り、二度と目覚めない。