夢みるクジラ
遠い昔、遠い昔 海を泳ぐ大きなクジラがいました。
とても大きな体なので どこへ行っても窮屈です。
どこへ行っても邪魔者です。
みんなに嫌われてしまうので クジラは悲しくなって
誰もいない場所へ行くことにしました。
誰もいない場所はどこだろう?
クジラは大きな体を動かして 誰もいない場所を探します。
星のきれいな町 冷たい銀世界 風が吹く砂漠 暖かな花畑
いろんなところで嫌われながら とうとうクジラは誰もいない場所をみつけました。
そこにはなにもありません。
クジラは疲れて横たわり 誰にも知られず涙を流します。
今まで見てきた世界は なんて美しかったのでしょう!
だけどそこでは嫌われてしまうのです。
クジラはずっと泣き続けて 目が潰れるまで泣き続けて やがて……。
自由に泳ぐ 夢をみました。
そこには広い海があって きれいな小さなクジラも泳いでいました。
なんて美しいのでしょう!
クジラは嬉しくて ずっと夢を見ていることにしました。
だからクジラはしりません。
大きな体が ふわり 浮いたことを。
流した涙が ふわり 浮いたことを。
涙が海になってクジラを包んだことも 海が宇宙まで浮いたことも なにも知らないまま。
クジラはこうして 幸せに宇宙を泳いでいるのです。
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